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Web担当者がサイト運用で抱える3つの問題とその解決方法

Web担当者がサイト運用で抱える3つの問題とその解決方法

はじめに

Webサイトの運用を担当する方の多くは、Webに詳しくなく、ましてやデザイナーとしての実務経験などない状態で、異動というケースではないでしょうか?
社内からの要望や緊急の対応も日常茶飯事な上、日々変わりゆく新しいテクノロジーやマーケティングにも対応しなければならず、思っていた以上に大変なことが多いですよね…。

今回は企業サイトやブランドサイトを担当しているWebサイトの運用担当者の皆さんに向け、運用上、抑えておきたい基本的なポイントをご紹介。架空のWeb担当者・吉田さん(仮名)を取り巻く3つの問題にスポットを当てながら、皆さんの一助となるような解決方法をご紹介できればと思います。

Web担当2年目 吉田さん(仮名)のケーススタディ

架空の人物・吉田さん(仮名)は、家具雑貨運営会社に勤務するWeb担当者。

元々は店舗運営に携わっていましたが、学生時代の選択授業や所属していた広告系サークルで、Web制作やデザインについて齧った経験や、休憩時間中にオンラインショッピングやSNSなどのWebサービスをよく利用していることから、次世代の担当者を検討していた社内で白羽の矢が立ち、昨年からWeb担当者としてデビュー。

完全専任という形ではなく、ECサイトの更新やカスタマーサービスも兼任しながら、店舗サイト更新をメインに、忙しい毎日を送っています。

なお、上司からはWebサイトを活用した来店顧客数増加案やサイトの成長・改善施策を企画・提案するよう指示を受けていますが、日々の更新業務に追われ、なかなか手を付けられない状況が続いています。

出勤時、ふと曇り空を見上げる架空のWeb担当者・吉田さん(仮名)※写真はイメージです。Photo by Falco Negenman on Unsplash

 

Web担当者プロフィールと対象サイトの運用状況

  • 氏名:吉田 咲さん(仮名)27歳/女性/入社6年目
  • 所属:株式会社古巣帰商事 マワタリファニチャー事業部
  • 担当範囲:店舗サイト運用担当、ECサイト(更新・顧客対応)兼任
  • スキル・使用ツール:Photoshop/illustrator/Visual Studio Code(基本のみ理解)、Word/PowerPoint/Excel
  • サイト運用状況:週一回の定期更新、不定期イベント・特集の更新、突発・緊急的情報の更新
  • CMS:お知らせ機能のみ※そのほかはhtml(レスポンシブデザイン)での実装・構築
  • PJ体制:店舗サイト運用担当は吉田さん(仮名)のみ。週一回の定形更新(チラシ情報)だけ、外部企業で対応。

 

その①:吉田さん(仮名)自身のデザイン・構築スキルが足りない問題

すべてを制作会社に依頼するプロジェクト体制を組む場合や、一部分のみを依頼するケース、はたまた全てをインハウス(社内)で対応するケースなど、そのあり様は企業によってまちまち。吉田(仮名)さんの場合、週一度の定期更新は外部の制作会社に依頼していますが、それ以外の更新は基本的に吉田さん(仮名)一人で対応しています。

自身で新規のページを制作する際、簡易的なテキストや簡単な画像のレイアウトであれば対応できますが、Webデザイナーとしての実務経験はないため、見た目やレイアウトもバラバラで、堂々と公開できるレベルではありません。レイアウト崩れや思わぬ不具合・ミスを起こしてしまうこともしばしばし。冷や汗をかきながらなんとか対応している状態です。いくつかの参考書は手元にあるものの、読み進める心の余裕もありません。

 

解決策

①コンポーネントを用意する(または制作してもらう)

サイト運用上、必要、または想定しうるコンポーネント(=デザインパーツ)をデザイン・構築し、一覧ページにまとめます。「見出し」「リスト」「画像+テキストのレイアウト」「表組み」「ボタン」「注釈」など、Webサイトを構成するコンポーネントは多種多様に存在します。これまでの実績や今後の予定も踏まえながらリストアップしていきましょう。

運用以後、CMSがなくても、そのコンポーネントを利用(コピー&ペースト)することで、おおよそのページを構築することが可能になり、その作業効率も飛躍的に向上。プロがデザイン・構築したものであれば、レイアウトが崩れるようなリスクも低いので、デザイン・構築については外部のプロ・制作会社に依頼することが望ましいです。

サイトリニューアルを行う際にもこのような運用領域についても、制作サイドと協議しながら、スムーズで安全な運用体制の構築を目指しましょう。

 

②新規デザインや根幹に関わる箇所は外部に依頼する

コンポーネントが用意できない場合や、デザイン・レイアウトが既存ページに存在しないといった場合は、外部のプロの手を借りることを前向きに検討しましょう。

インハウスですべて対応する体制の場合、担当者自身のデザイン・構築スキルを上げることも大切ですが、レイアウトの崩れ(レスポンシブデザインの場合は特に)やデザイン・構築ルールからの逸脱による思わぬアクシデントに延々と苛まされるリスクが上昇します。最新OSやスマホへの適応など、目に見えない部分への配慮も必要となるため、状況に応じて迅速に対応できることと外注コスト軽減以外のメリットはありません。

餅屋は餅屋。想定しうる新規ページやイレギュラー案件を事前に算出し、年間の運用コスト予算にあらかじめ組み込むなど、外部に頼ることを厭わない体制づくりを心がけることが運用全体の負荷を下げることに繋がります。

 

その②:トップダウンの指示、急転直下で降りてくる問題

「TOPページに新しいサービスを一番目立つように入れよ!」

「新年度の代表メッセージを一番目立つように入れよ!」

「….を一番伝わるように入れよ!」「….を一番惹き立つように入れよ!」(無限ループ…)

トップからの指示が、月に数回、吉田(仮名)さんの元に降りてきます。
サラリーマンなら、抗うことのできないトップダウンの指示。何事よりも(?)、迅速に対応する必要がありそうです。

ただ、指示をそのまま鵜呑みすると、ルールから逸脱してデザイン的な統制が取れなくなってしまったり、本来最優先で考えるべきユーザー(お客様)目線で考えると、不適切な情報・見せ方になってしまったりと、なかなか気が進ない吉田(仮名)さん。

この状況、どうやって打破すべきでしょうか?

 

解決策

最大の武器は「信頼」

答えは実にシンプル。常日頃から、自主的・積極的な提案や情報を共有し、自社における専門家として、経営層に認めてもらい、信頼を得ることです。

Webサイト運用に関するトピックス(例:アクセス状況やお客様からの評価など)の共有や、新しいテクノロジーや消費動向競合他社のWebサイト分析レポートなど、経営層としても実は押さえておきたい情報はたくさんあります。

言われてから動くのではなく、自主的な提案や情報共有を継続して行っていくと、経営層側からの信頼も自ずと得られるはず。「わかった。今後は要所だけで報告してくれれば大丈夫」と経営層が根負けするぐらい積極的なコミュニケーションが取れれば、なおベターです。

「Webサイトのことは、私にすべて任せてください!」という気概を持ち、自社のサイトのことを最も把握している「Webマスター」としてのポジションを確立していきましょう。その関係性があれば、突発的な指示に対しても、きっと最適な解で打ち返せる(納得してもらえる)はず、です。

 

その③:各部署とのコミュニケーション負荷が高い問題

社内の各部署から更新依頼を受ける吉田(仮名)さん。

その更新依頼は担当者によってまちまち。メールにデータ(PowerPointやExcel)添付で指示を受けることもありますが、電話での依頼、赤字プリントの持ち込み、はたまた口頭での伝達など、あらゆるパターンで依頼を受けています。

更新タイミングも案件単位で調整する必要があり、確認作業も案件によっては度重なる修正が発生し、思わぬ時間を喰ってしまうことも多く、予想外の残業も日常的に発生しています。

解決策

発生する事象を冷静に判断し、事前に予想して行動を取る。そうすればおのずと作業効率は上がっていきます。ルールに則り、無駄のない作業を行うことで、誰でも効率的に進行できる運用体制に近づきます。つまり、いかにイレギュラーをレギュラー化できるかが、運用改善の鍵となるのです。

①基本の更新スケジュール・ルールを策定・共有する

更新スケジュールは、一般に、

・週次更新

・月次更新

・年次更新

・イレギュラー(突発)更新

分類することができます。ですが、各部署の担当者はこのスケジュールをまったく把握していないのが実情です。

スケジュールを各部署の担当者に周知徹底すると「Webサイトの更新は毎週火曜日だから、そこに合わせて情報を整理しよう」といった自発的な更新スケジュールの是正が期待できます。知らなければ、すべて突発・緊急案件に、といったこともありえます。知ると知らないでは大きな違いが生まれるはずです。

また②の内容と重複しますが、「更新希望日の●日前までに依頼内容を入稿する」といった進行スケジュールも事前共有し、締め切りを意図的に作ると、滑り込みの依頼や締め切り後の依頼にも冷静に対処できます。「締め切り」があると、そこに向かって集中力が高まる心理(パーキンソンの法則)をうまく活用し、各部署にもサイトの活性化に協力してもらいましょう。

 

②依頼フォーマットを策定・共有する

更新の具体的な内容、原稿・画像の入稿有無、公開希望タイミング、テスト確認の有無など、依頼に必要な内容を使って、フォーマット化します。

Excelがもっとも高汎用なツールといえますが、「更新依頼用のエクセルが見つからないので再送してほしい」といった、本末転倒な問い合わせも考えられうるのと、フォーマットを更新したい場合、再度周知する必要もでてくるため、GoogleスプレッドシートやGoogleフォームなどのクラウドツールを活用すると有効的。

可能であれば、やりとり自体もクラウド化backlogなどのプロジェクト管理サービスも検討しましょう。

ビジュアルでの具体的・詳細な更新を受ける場合は、PowerPointをはじめ、Adobe XDFigmaなどのプロトタイピングツールによる依頼・入稿に一元化し、抜け漏れ・誤りや、いわゆる「言った言わない問題」を極力防止するコミュニケーションを心がけましょう。

作業の効率化や実作業への理解を得ることはもちろんですが、外部のツールを推奨していくことは、社内のデジタルリテラシーを上げることにも繋がり、会社にとっても、良い相乗効果が生まれる可能性があります。「手書き入稿禁止」となると、手書き世代(?)から反対意見が出るかもしれませんが、担当者向けの説明会を開催するなど使い方も含めて積極的に社内で共有し、定着させていきましょう。

③運用体制を改善する

制作コストには外部に依頼し支払う費用だけではなく、内部とやりとりや外部へ依頼するまでにかかる担当者自身の工数、つまりコミュニケーションコストも発生します。情報掲載や、成果であるコンバージョンなど、可視化されるものごとに目が向きがちですが、運用にかかるコストも重要な指標だと言えます。

運用のあり方や社内の運用フローについても制作サイドに共有し、会社、そして担当者である自分自身のプラスとなる運用体制・システム構築を目指しましょう。

まとめ

吉田(仮名)さんが抱える問題はこれ以外にも「サイバー自警団(社内)に捕まる問題」「SNSの運用が増え続ける問題」などなど、枚挙にいとまがありませんが、まずは今できることから。社内におけるさまざまな体制・ルールを整えながら、サイトにおける優先順位をはっきりとさせることで、余計な作業を排除。余剰を戦略的に作り、サイトの成長に時間が割きましょう。

本来、Web担当者がなすべきことはサイト改善・成長戦略・目標設定などを描き、その目標と実現に向け、サイトを成長させていくこと。場合によっては、XD(デジタルトランスフォーメーション)の推進役の役割も担う、重要なポジションでもあるはず。

サイト運用を的確かつ効率よく回し、会社の情報発信・広報・売り上げ、そして成長に貢献できるWeb担当者を目指しましょう。

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