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Web担当者がサイト運用で抱える3つの問題とその解決方法 II

Web担当者がサイト運用で抱える3つの問題とその解決方法 II

はじめに

今回は、前回の続編「II」として、企業サイトやブランドサイトを担当されているWebサイトの運用担当者の皆さんに向け、サイト運用において、抑えておきたいポイントをご紹介。架空のWeb担当者である吉田さんの日常で巻き起こる問題をケーススタディにその解決策をお伝えしていきます。

Web担当 吉田さん(仮名)の場合

前回に引き続き、主人公は、家具雑貨運営会社に勤務するWeb担当者・吉田さん(仮名)。
Web担当者とECサイトの更新やカスタマーサービスも兼任しながら、店舗サイト更新をメインに、忙しい毎日を送っています。

上司からはWebサイトを活用した来店顧客数増加案やサイトの成長・改善施策を企画・提案するよう指示を受けていますが、日々の更新業務に追われ、なかなか手を付けられない状況が続いています。

Web担当者プロフィール:

  • 氏名:吉田 咲さん(仮名)27歳/女性/入社6年目
  • 所属:株式会社古巣帰商事 マワタリファニチャー事業部
  • 担当範囲:店舗サイト運用担当、ECサイト(更新・顧客対応)兼任
  • スキル・使用ツール:Photoshop/illustrator/Visual Studio Code(基本のみ理解)、Word/PowerPoint/Excel
  • サイト運用状況:週一回の定期更新、不定期イベント・特集の更新、突発・緊急的情報の更新
  • CMS:お知らせ機能のみ※そのほかはhtml(レスポンシブデザイン)での実装・構築
  • 体制:店舗サイト運用担当は吉田さん(仮名)のみ。週一回の定形更新(チラシ情報)だけ、外部企業で対応。

その①:自ら重箱の隅をつつきに行きがち問題

自他ともに認める几帳面な性格の吉田さん(仮名)。表記ルールの統一やパーツ制作ひとつをとっても「なるべくきれいに、美しく」をモットーに業務にあたっています。

社内の営業担当者からも「きれいに作ってくれてありがとう」と褒められることもあり、うれしさ反面、粒さなところまでこだわり、公開ギリギリまで対応に追われることに、悩みを抱えています。

…突然ですが、吉田さん、

「その作業、どのくらいの費用対効果があるか、考えたことはありますか?」

デザインがバラバラなサイトを運用するのは、送り手として心地よいものではありませんし、数多のユーザーがアクセスしていることを想像すると、見た目上、きれいにしておきたいという気持ちはとても大切です。

ですが、そのこだわりの実現にかかる1時間と、例えば情報を発信するためにかかる1時間。どちらが、有益な作業でしょうか?

発信する情報次第ではありますが、少なくとも、後者の作業の方がユーザーにとっても、会社にとってもプラスになるはずです。

サイトはあくまで会社の資産であり、更新作業ひとつにもコストが発生しています。「個人」のこだわりでサイト運用をロックしすぎると、誰もその鍵を探すことができず、本来のゴールから遠ざかってしまうことにもなりかねません。

解決策:

① 属人化しない作業、運用体制を構築する

「こだわりはそこそこに。誰でもできる。」を目標に、作業を標準・平準化し、作業のブラックボックス化・属人化(私物化)を回避しましょう。異動などで、自分以外の人が作業する可能性を常に意識しておくことが、結果としてサイトの成長・ビジネス貢献に繋がるはずです。

 

② マニュアルをしっかり残す、引継ぎに時間をかける

前述策と重なる部分も多いですが、そもそも「作業マニュアル」が存在しないという企業も少なくありません。

この場合「誰も対応できない」などの突発事象が発生しやすくなります。すでに別部署へ異動したはずなのに、その仕事が背後霊かのように前任者につきまとう、というケースも起こり得えます。「退職」による担当者変更の場合、退職した前任者へ連絡、といった悲しいケースも…。

まずは、基本操作の手順をまとめたマニュアルを作成し、定期的(半期に一度が目安)にメンテナンスするようにしましょう。
Wordなどのテキストでまとめたマニュアルも多いですが、フロント画面、管理画面、FTPなど様々な画面がある中、文章のみのマニュアルで伝えるのは、おすすめしません。美しい必要はないので、キャプチャを載せたビジュアル付きのマニュアルを作成し、誰でも直感的に作業できる資料を目指しましょう。

異動・引き継ぎに際し、マニュアルだけでは伝えられないという場合は、引き継ぎに時間がかかる旨をしっかりと会社に伝え、数度の引継ぎ会議を設けましょう。口頭での説明や質疑応答で補足し、イレギュラーな事象を除いては、前任者に問い合わせが発生しない状態で引き継げるのが理想です。

 

その②:SNS運用が増え続ける問題

コロナ渦により、従来通りのリアルなコミュニケーションができなくなってしまった今、吉田さん(仮名)が勤める家具雑貨運営会社も当然ながら、デジタルマーケティングへのシフトチェンジが急務となっています。

あれよというまに、細々と吉田さんひとりで運用していた「SNSのコミュニケーション強化」が社内が下記の内容で決まりました。

・既存:Facebookページ(コミュニケーション強化)

・既存:instagram(商品訴求、キャンペーン施策、ライブ配信)

・新規:LINE(キャンペーン施策)

「SNSの強化」といっても、コメント返しや時世に合わせた投稿など、地道なコミュニケーションの積み重ねや炎上などの緊急対応などのノウハウの蓄積が必須ですし、配信やキャンペーンツールも追加されるため、常に最新情報・他社事例(異業種含む)をキャッチアップしながら、運用していく必要があります。

吉田さんの場合、情報発信を目的に定期的な投稿を行っていただけですが、今回のミッションは「コミュニケーションの強化」。これまで以上に注力する必要があります。ひとり、かつ、そのほかの業務も兼任している吉田さん。

この状況、どう打開していくべきでしょうか?

解決策:

① まずは、やってみて、考え、伝える

外部に協力を仰ぐことができない場合、つまり、内省で対応する場合は、人員を充足するか、現状の人員のままで対応するかの二者択一になります。こと、デジタル周りの作業については、その容態や作業内容を会社・経営側が理解・把握できていないということが多く「そのほかの業務を効率化して、新しいことに挑戦を」といった指示になりがちです。

このように人員補充ができない場合でも、前向きに考え、まずやってみることからはじめましょう。一定期間、運用を行った上で、作業フローと作業時間をまとめ、担当部署として理想とするリソース(1日に何時間、1週間で○時間など)や体制・運用フロー図を作成し、上長へ提案します。

あるべき状況を、会社に提案できず(声を上げられず)、他業務にプラスオンの状態で仕方なく運用を続ける企業も少なくありません。結果として、片手間でこなすだけになってしまい、期待されていた効果・結果が出ないため会社にも貢献できず、自分の評価すら下がってしまう、まさに泣きっ面に蜂となってしまうケースも。

「本気でやるならこのくらいの追加投資が必要だ」ということを、実践と根拠を持って提案し、買い手よし、売り手よし、担当者よし(?)の三方に利益が生まれるよう取り組みましょう。喫緊での人員補充という答えが出なくても、粘り強く提案・交渉していくことで、何らかの道が開けてくるはずです。

 

② SNS運用のプロを目指す

SNSの運用は、コードを理解する必要もなければ、Webやデザインに詳しい必要もありません。重要なのは、それぞれのSNSの特性を理解し、ユーザーが求める情報・コミュニケーションのあり方を汲み取れるか否か。まして、社内調整業務を除いては、社会人経験/年齢に左右されることもなく、若い担当者にとっては、成果と評価を上げる機会になりえます。

SNSは多くの企業が運用していることもあり、リソースとして求められる機会も多い業務(職種)です。運用の中でしっかりとした知見・ノウハウを積み重ねられれば、転職活動でも優位に繋がる場合も。プラスオンの作業となったとしても、自身のキャリアアップも視野に、意識・モチベーションを高く運用を続け、その道のプロフェッショナルとしてのスキルを身につけることを目指しましょう。

 

その③:サイバー自警団(社内)に捕まる問題

スマートフォンの普及で、いつでもどこでもWebサイトが閲覧できるようになったことで、いろいろな部署・スタッフから指摘をもらう吉田さん。誤字・脱字や情報の誤りがほとんどですが、しばしば主観的・感覚的な意見や、時代に則していないような意見もあり「個人の好みでは?」「昔の考え方では?」とも言い返せず…。どこまで対応すべきか、頭を抱えています。

解決策:

① 明らかなミスへの指摘は、迅速対応

社内からの誤字・脱字、情報の誤りに関する指摘。言わずもがな、公開前にしっかり校正して完璧な状態で世に出すべき情報です。真摯に受け止め、迅速に対応しましょう。社内の指摘に頼りなるのは厳禁ですが、ある種味方につけることで、クリティカルな事故を防ぐことにも繋がります。

 

② 主観的・感覚的な指摘には、エビデンスをもって対応する

①のような指摘以外では、感覚的な指摘(例:「この色は違うのではないか?」「もっと大きいバナーの方がいいのではないか?」)や、他社と比較しての指摘(例:「A社はこうしているのに、なぜうちはしていないの?」)など、指摘主の主観的・感覚的な意見も発生します。

このような意見も参考としてある程度運用で汲んでいく必要がありますが、あくまで責任(信念)を持って運用しているのは担当者自身です。たとえ、立場が上の方からの意見だとしても、まるごと鵜呑みする必要はありません。多種多様な意見や指摘にも、ぶれることなく、的確に回答できるよう、日頃から自社サイトのアクセス分析やデータ把握を行い、他社事例・業界動向もチェックすることで、理論武装しておきましょう。


まとめ

2回に渡り、吉田(仮名)さんが日頃の運用で抱えている問題をケーススタディにその解決策を提示してきました。ここで記載した問題は、あくまで一例であり、企業の規模や価値観、業態によってそのあり方はさまざまです。

いずれにせよ、Web担当者がなすべきことは成長戦略を描き、目標実現に向け、サイトを運用・改善・成長させていくことです。地道な作業も多いサイト運用ですが、視座を高く持ち、会社の情報発信・広報・売り上げ、そして成長に貢献できるWeb担当者を目指しましょう。

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参考文献
・デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?(日本実業出版社:垣内勇威 2020年)

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