はじめに
去る2022年4月1日、フルスケールに1名の新たなメンバー(新卒)を迎えることができました。
※昨年の新卒採用活動についてはこちらから。
本記事では、フルスケールが今春から実施している「オンボーディング」施策について、ご紹介したいと思います。
きっかけ
新規スタッフの入社後の受入対応は、会社の考え方や業務に関するオリエンテーション、環境・ツールの共有や設定、デザイン・構築課題、図書推薦など、基礎的な情報提供とフィードバックを除いて、基本的には実案件を通してのOJTがメインでした。
結果として、コミュニケーション不足や、制作方針への理解不足、成長スピードの鈍化など、さまざまな課題・問題が発生していました。
「会社や環境にいち早く慣れてもらい、戦力として活躍してもらえるかどうか」は、業種・規模問わずどの会社にとって命題。サイボウズやメルカリ、LINEといったWebサービス提供会社では、重点的にオンボーディング施策を実施していたり、当社のようなデジタル(デザイン)ソリューションを行う企業でも「People Experienceチーム」「コーポレートコミュニケーション部門」など、オンボーディング施策の推進を含めた、早期戦力化や定着率向上を図る専門部署の新設が増えています。
それほど「人」が会社の価値に直結するのがこの世界。フルスケールも、これまでの課題を解決すべく、本年の新卒スタッフを迎えるタイミングを機に初のオンボーディング施策を実施しました。
オンボーディング施策<内定〜入社前>
これまでの課題
実務未経験者の場合、プロとして世の中へ出せるレベルになるまでには、相応(年単位)の時間がかかります。採用面接やポートフォリオだけでスキルレベルを推し量るにも限界が…。
実際、提出してもらったポートフォリオからスキルがあると想定していたのに、入社後に想定スキル内でお願いした作業がまったく進められなかったケースなど、入社後のギャップが大きな課題になっていました。
①入社前のデザイン基礎トレーニング
入社までの期間中は、デザインスキルの把握・レベルアップを目的に、実際のプロジェクトで使用したWFや素材を元にした、デザイン課題にチャレンジ。Slackで進捗共有を行いながら、定期的にフィードバックを行いながら、実務に近い形で、経験を積んでもらいました。
②入社前の構築基礎トレーニング
同じく、構築スキルのベースアップを目的に、オンラインの学習ツール「Progate」を法人契約。これといった縛りやルールは設けず、入社前の空き時間に適宜利用してもらいました。html/cssなど、すでに習得している言語の復習から、今後必要になる言語の予習など、状況にあわせて自由に取り組んでもらいました。
課題などの実務形式で積める経験とは一線を画しますが、1人あたりの月額1,000円台と非常にお手頃な価格。進捗も管理画面上で確認できるため、「ここまでやりました!」などの報告も不要。Webデザイナー・エンジニア採用の内定期間・準備期間中のライトな基礎学習ツールとして、適したサービスです。
③入社前のイベント参加&インターン
新型コロナウイルスの感染状況を鑑みながら、社内イベント(忘年会など)にも参加してもらい、入社前の一カ月間はインターンとして、週に1回程度の頻度でオフィスに出向いてもらいました。
インターン中は、構築に関する課題(主に運用・更新作業)に取り組んでもらいながら、当社の普段の様子やスタッフの雰囲気を知ってもらい、環境に慣れてもらえるように心がけました。
2021年12月 忘年会の様子
オンボーディング施策<入社以降>
①入社式直後に実施した「Welcome!! 1 on 1」
私自身、新卒時は同期が不在の一人入社だったのですが、右左も分からない中、数十人いた周りの先輩方が、どういう人で何をやっている人なのか、まったく分からず…。コミュニケーションを取るにも四苦八苦した記憶が、強く残っています。
そんな経験もあり、一日でも早く会社の雰囲気や、各スタッフの人ととなりを知ってもらい緊張感を解くこと、今後のコミュニケーションを円滑にすることを目的にしたのが「Welcome!! 1 on 1」です。
通常、「1 on 1」=「上長との個人面談」を意味することが多いと思いますが、この1 on 1は、出社しているスタッフ全員が面談相手。入社式直後から、30分単位で、スタッフが入れ替わりながら実施。
既存スタッフ自身の自己紹介(担当領域やこれまでのキャリアなど)をメインに話をしてもらい、どういう人たちと働いていくのかを、具体的にイメージしてもらえるように心がけました。差し支えない範囲で、趣味や出身などプライベートな情報も共有し、何かしらの共通点を見つけてもらい、今後のコミュニケーションに繋げてもらうことも趣旨にしました。
②15日連続!日替わり講座
入社以降は、オリエンテーションをはじめ、各種課題に取り組んでもらい、3週目から、1 on 1形式での座学講座を実施。短期集中の座学も検討しましたが、オンボーディング全体の目的でもある「環境や人への慣れ」も狙い、テーマ&講師は「曜日替り」というラジオパーソナリティ形式で、15日間連続で講義を実施。
実際に開催した講義のテーマと概要
講師:5人/1回 45分程度/各テーマ 3回ずつ/合計15回(15営業日連続)
月:最新自社事例解説とアクセシビリティ
火:Webデザイナー・エンジニアとしての持つべきスタンス&考え方
水:社会人・組織人として知っておきたい常識&マナー
木:現状の構築レベルの把握とマークアップ総論
金:仕事と時間とお金の話
- 外部での講師経験があるスタッフは、自前のレジュメをアレンジして講義。
- 当社での経験が長いスタッフは、過去に担当したプロジェクトを実担当者視点で解説。
- 大手企業でのキャリアを持つスタッフは、名刺交換など社会人の基礎的マナーを教示。
- 直接の先輩となる若手エンジニアは、実務的な作業や今後持つべき視点を共有。
- PJを推進するディレクターは、ビジネススキームやコスト・工数の基礎をレクチャー。
小さな組織ですが、積羽沈舟。既存スタッフの協力もあり、Web制作の枠を超えた多様なラインアップに。
講師陣の負荷について
時間をかければ、わかりやすく、価値ある内容になる可能性は格段に上がりますが、その準備にかけた時間や労力と比例するかは、不明瞭です。今回は「講義の準備に極力時間をかけないこと」をルールに、実施内容を検討してもらいました。
通常業務への負担を軽減する意味合いはもちろんですが、スピーディーなアウトプット(もしくはインプロビゼーション)で、既存スタッフがどこまで価値ある時間を作れるかも、裏の狙いに。
施策に対するスタッフからの意見・感想
新規スタッフ本人からの意見・感想
「正直、講義を毎日楽しみに出社していました。キャリアや業務領域が違い方々から話を聞くことで、フルスケールの一員として持つべき視点や全体像を理解できましたし、社会人マナーについても教えていただきました。もし可能なら、今後も毎日継続してもらいたいです!」
講師陣からの意見・感想
- 自身のこれまでのキャリアの棚卸し、振り返りの機会になった。
- アウトプットすることで、モチベーションの向上になった。
- 普段考えていることを伝えられ、自分自身の仕事に向き合う姿勢を整理するきっかけになった。
- 新人スタッフとはコミュニケーションが肝になるので、この機会があってよかった。
- テーマについては、全体のバランス含めて、もっと詳細を詰めた方がベター。
- 設定時間を過ぎてしまうことがあったので、タイムキーピングの重要性を痛感した。
- 45分という時間設定は、互いに集中力を維持しながら臨める時間設定だった。
など、今後に向けた改善も含め、ポジティブな意見・感想が目立ちました。
まとめ
フルスケール のように、クリエイティブワークやソリューションを生業にしている企業の場合、目前のタスクや技術研鑽に意識が集中しがち。この仕事の宿命ともいえますが、やはりその弊害として、人材育成やコミュニケーションの円滑化といったスタッフの「体験」や、組織全体の価値を向上に対する意識が、どうしてもおろそかになってしまいます。
一人ひとりの力が重要になる小規模の企業だからこそ、オンボーディングを行う投資対効果は大きいのではないでしょうか? 改めてメリットをまとめます。
新規スタッフ側
- 既存スタッフとの関係性構築(キャリアステップの明確化、コミュニケーション円滑化)
- モチベーション、エンゲージメントの向上
- 会社全体像の把握と理解
- 入社前後のギャップ、疑問点、不安の払拭
既存メンバー側
- 新規スタッフとの関係性構築(スキルの見える化、相互理解、コミュニケーション円滑化)
- 普段とは異なる「教える」「伝える」立場でのアウトプット経験
- 準備などの負荷が比較的少ない状態で、組織の変化・成長にコミット
会社側
- 戦力化速度の向上
- 会社全体のコミュニケーション円滑化
- 従業員エンゲージメントの向上
このように、個人の成長、モチベーションの向上や組織へのエンゲージメントにもつながる、三方良しの施策となったのではないかと感じます。(主催としても、楽しみながらできたことが何よりの証拠!)
実際、入社2-3年目のスタッフからも「この内容なら自分も参加したい!」という声が挙がり、一部の講義に参加してもらい、良い刺激・波及効果も。
今回は、あくまで新卒スタッフに向けた研修企画としてのオンボーディング施策でしたが、中途採用にも応用して展開できる施策です。経験・年齢・役職に遠慮することなく、積極的にアイデアを出せるようなムードを作り、暗黙知を増やしながら、個人・組織双方の価値を高めていければと思います。